丹生都比売神社の重要文化財
獅子造兵庫鎖太刀の模造
平成3年作
彫刻的な作品に挑戦してみようと思い、東博で調査させて頂きました。
兜金、足金物、責金物、石突、俵鋲は鋳造と思われましたので、
原型を油土で作りました。
写真を見ながら、息を留めるようにして、ヘラで造形しますが、
獅子の太腿をなでているだけで、1日過ぎてしまうこともありました。
この過程で、高校の美術の時間のレベルからだいぶ技術と感性の向上がありました。
この原型から、蜜蝋の原型を作って鋳造し、鏨で精密に彫金して仕上げます。
ここまでで約一年かかりましたが、
また東博で本歌と比較させて頂きました。
そして、獅子の顔が大きすぎることに気がつきます。
写真の接写で、立体の盛り上がっているところが大きく映っているのを、
そのまま彫刻してしまったのです。
また油土の原型まで戻って作り直しました。
鐔の覆輪は厚手の銅板を打ち出して中空に作り、
彫金して鍍金をします。
地板は別に作って鍍銀し、
覆輪をかぶせて釘で留めています。
この太刀でも鍍銀が問題になりますが、
箔で鍍銀をしました。
アマルガムの場合と異なり、
箔の場合は直接銀箔を焼き付けることが出来ます。
原品もこのやり方であると思われます。
刀身は奉納された時のままの状態の物が入っていますが、
それを河内国平氏が写してくださった。
太刀の佩緒は、春日大社の酢漿文兵庫鎖太刀についている紐を、
西岡千鶴氏が復元してくださった。
完成に三年を要し、
平成4年日刀保の新作刀展覧会彫金の部に出品。
優秀賞。
※写真はクリックすると大きくなります