平成28年作
全長113cm 鞘長89.5cm 刀身刃長81cm
小龍景光写しに付けた拵です。
27年程前に多摩ニュータウン
N0.426遺跡出土の太刀装具の
資料紹介文を調査団の方から
送って頂いた事がありました。
兜金と縁金物
(紹介文では鞘口金物とされている)でしたが、
兜金の中に縁金物が押し込められた状態で
表土層中から出土したということでした。
したがって時代は断定できないが、
これらがセットである可能性が
高いと思われました。
当時手掛けていた葦手絵兵庫鎖太刀や
銀銅蛭巻太刀の金具と比べても
大変大きな金具でした。
それが小龍景光写しに合わせて拵の作図をすると、
この金具がピッタリ合うのです。
そこで付せられていた実測図どうりに金具を作り、
それに合わせて柄の成形、鞘の肉置きを復元して行きました。
金具の構成は兜金と同様に石突きも、
端を葛金で約す形式にして原則に従い、
足金物は作ったことのなかった
単脚腹帯形にしてみました。
注文者の要望が三つ巴文でしたので、
足金物の甲羅、目貫、俵鋲に、
中世に多い尾の長い勾玉状の巴文を彫りました。
鐔は無文の障泥形で銀銅合金の覆輪をかけ、
銀銅合金の大切羽と、
鍍金、山金、鍍金と三枚重ねた小切羽を
両面に配しています。
鞘は0.4mm程の厚めの生皮を貼り
黒漆の塗りたてにしています。
柄は鮫皮で包み黒漆を塗って、
朱漆を塗った革紐で柄巻をしました。
那須家の太刀の巻き方ですが、
柄の大きさに合わせて少し太めの革紐にしています。
太刀の赤い柄巻は現存品のイメージにはありませんが、
絵巻物にはよくみられます。
刀身を装着して手に持つと、
その大きさとともに重さも伝わってきます。
蒙古襲来絵詞に安達泰盛邸の門の脇に
大きな太刀を抱えて座る武士がえがかれていますが、
少しその気分が体感できた気がします。