三鈷剣– 第一室刀剣

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三鈷剣
三鈷剣

 

金剛寺の国宝三鈷剣の模造

平成26年作

 

銀銅蛭巻太刀から葦手絵
そして獅子造兵庫鎖太刀と
作り進めて行くうちに、
私の中で変化が起こってきました。

 

それまで刀剣関係のことだけに
興味がむいていて、
何とも思っていなかった書や、
一応勉強のため知っておくほうがいい
くらいにおもっていた
密教法具等が、本当に美しいと
感じるようになってきたのです。

 

そのころ金剛寺の三鈷剣の造形が
ただごとではない、
ぜひ作ってみたいと
思うようになっていました。

 

たまたま東博で手にした

奈良博の密教工芸展の図録に
この三鈷剣が出ていて、
今開催中ということでした。

さっそく奈良の河内国平氏に電話して
展示の様子を伺うと、
最終日に手入れに行くから許しが出たら、
手に取って見せてもらえるかもしれない

とのことでした。

 

有難いことにお許しが出て、
拝見がかないました。

四振りの剣がありましたが、
やはり金剛寺の三鈷剣がすばらしく、
集中して拝見させていただきましたが、
無垢の鋳造で重いこととか、
鞘口の特殊な構造など直接見ないと分からないことが
いろいろありました。

 

 

 

 

 

三鈷剣
三鈷剣

 

家に戻ってさっそく図面を作り、刀身の木型、柄の木型作り、
それから蜜蝋の原型へと作業を進めました。
この大きさが自作の鋳造設備の限界でしたがなんとか鋳造にも成功し、
制作を思いついてから実に順調に事が運んだものでした。

しかし注文を受けているわけでもなく、
これを欲しいという人も現れませんでしたので、
経済的な理由で作業は中断してしまいました。

それから22年程して、事情は相変わらずでしたが作業を再開し、
3か月程で完成しました。
蓮弁の際の処理やどこをとっても張りのある鈷部の形など、
古い法具の優れた技術と造形感覚を改めて体感することが出来ました。

アマルガム鍍金を施していますが、このように質量のあるものは熱が逃げないので、
熱しすぎると均等に密にアマルガムを焼き付けて行く作業中に、焼き上がってしまいます。
5時間神経を張り詰めて鍍金を終了しました。

古い法具の魅力は魔を払う呪力を形に表現した造形にありますが、
長年の使用により鍍金が擦りはがれて所々黒味のある地金が出ているのも大変美しいものです。
私の作品でもこの古色付けをする事が多いのですが、
それは作品の上に時間を表現することだと思っています。

現在刀身がないので、紫檀製の木型に銀箔を貼っていますが、
それでも特製の台に立てて部屋に置くと
まわりの空気が変わるのを感じます。