春日大社の重要文化財菊造腰刀の模造。
平成8年作。
柄頭を木地のままとした柄に筒金を嵌め、
鞘を黒漆塗とするなど一見して柏木兎腰刀と同様式の拵だと分かります。
しかしこちらは小ぶりで、肉取りも丸みが強く、
彫金も出来るだけおさえて簡素に作っていて、作風が大きく違っています。
全体に使用による手擦れの跡が見られ常用されていたように思われます。
黒漆が擦れて鹿角製の栗形や返角の白い地が見えたり、
裏瓦や鐺の飴色の牛角が見えるのは、
そうなる事を予定していたように効果的で美しいものです。
柄の朧銀(銀銅合金)の筒金に美しい地紋が出ていて、
そこに金銅八重菊の目貫が据えられています。
この筒金の地紋は全く見当がつかなかったのですが、
調査から20年程たった昨年、その復元に成功し作り直しています。
柏木兎腰刀がその柄金具に象徴されるように
作者の優れた表現力による作品と言えるのに対し、
菊造腰刀は経年変化まで計算に入れた材質の美による作品のように思います。
若干反りのある小ぶりな元重の短刀が仕込んでありますが、
大野義光氏が素剣の彫りも入れて作ってくださった。
下げ緒は西岡千鶴氏が拵の雰囲気に合う紐をクテ打ちで組んでくださった。
平成8年日刀保の第49回刀剣研磨、外装技術発表会に出品し努力賞受賞。