黒漆太刀1の様式が南北朝を中心とした時代の物と考えるようになり、
より鎌倉的な拵を作ってみようと思い着手しました。
金具は銀銅蛭巻太刀と同形式の物を、山金の鋳造で作り、
鐔は上下左右に猪の目を透かした障泥形鐔にしてみました。
この鐔は発掘品等でも例が多いのですが、
それを拵の中に組み込んでみたかったのです。
鐔の覆輪と猪の目、大切羽、足金物の猪の目に、
銀銅合金による配色をしています。
文様は松をくわえた鶴で、これも伝世品、発掘品共に例の多いものです。
足金物の甲羅、目貫、猿手の座金物に配してみました。
柄巻は現存する唯一の鎌倉時代の例である那須家の太刀のものを、復元してみました。
この太刀は、日本刀文化振興協会の第4回新作日本刀研磨外装刀職技術展覧会に出品し入選となり、
展示されませんでした。
この会は、審査員所見を送ってきます。
大変良い事ですので、参考までに披露いたします。
匿名の8名の審査員で、
1、鞘の塗りが気になる。
2、塗、漆にアラズ。
3、漆なのか?
4、太刀、鞘、刃棟の線、責金、柏葉の辺り細すぎ、古い拵えの特徴を良く捉えている。漆?
5、塗仕上げが悪い。
6、気泡?{鞘}
7、鞘の塗に問題あり。
8、鞘塗だけ見れば落選。漆を確認するように指示して欲しい。蝋色をとるように指導を。
以上 原文のまま。
漆に批判が集中しております。
漆の部分だけが自信をもって欠点を指摘できるとお考えになった様ですが、
2番と3番は漆を見ても漆とわからないことを自白されています。
8番が言っているように、
この人達は江戸時代の鞘のようにツルツルに磨きあげた蝋色塗を理想として、
鎌倉時代の黒漆太刀もそうしろと言っているのでしょう。
私は、国産の呂色漆を使用して、塗りたてで塗っています。
刷毛目や多少のフシがありますが、中世の黒漆太刀の塗りはそれでいいのです。
蝋色塗等にしたらぶち壊しです。
博物館にでも行って実物をよく見てくるとよいでしょう。
今必要なことは、日本刀文化の深耕です。